flower

　The flower that blooms in adversity is the rarest and most beautiful of all.　　 　　　　　　　　　　　　　　-Walt Disney

　新型コロナウイルスの影響で2月末から臨時休園していた総合レジャー施設｢みさき公園｣。ざっくりその中身を説明すると、動物園と遊園地と公園をほどよく混ぜたようなところだ。
　3月24日。様々なイベントが軒並み中止を発表し始めたコロナ禍の中、みさき公園はその最終営業日を1週間後に控え、入園時に検温を行い園内あちこちにアルコール消毒液を設置する厳戒態勢で営業を再開した。
　｢思い出の場所だから、最後にもう一度だけ｣と言う友人たちに連れられて、私は十数年ぶりにそこを訪れた。

　公園の中は、既に動物たちの別の動物園への引越しが済んで空のままのケージがあったり、営業停止状態が続くエリアもあったりした。しかし、マスクをしていても笑顔がかがやくスタッフの方々や、のびのびとしている動物たちがみさき公園を活気づかせていたことは間違いなかった。

　私たちはみさき公園を出て、近くの港まで歩いた。公園周辺は人気もなく、心地よい風に潮の香りが運ばれ広がっている、のどかな街だった。海に近づくにつれ空が夕焼けに染まって美しかった。
　潮風に吹かれながら、友人の話を聞いていた。高校時代同じ同好会で写真を撮っていた彼は｢今は音楽で有名になりたい｣と夢を語った。今はいろんなところにたくさんのアーティストがいて、どれもこれも才能に圧倒されるけれど、俺は俺の曲や詞をつくりたいと。
　久しぶりに会った友人は昔から背が高かったけれど、またひと回り大きくなったように見えた。

　私は普段から意志が弱く、不安になりがちだ。ここ最近はそんな空気が社会や生活全体にも広く重く立ち込めているように思う。向かう方向はこれであっているのか、と思うこともある。
　ただ、強い風に吹かれても、根を張り咲き続ける花でありたい。逆境の中で咲く花は、最も稀で最も美しいのだから。

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フォトエッセイ 「flower」
2020.05